2020/05/28 23:07

5月28日 晴れ

本日のBGM Boards of Canada


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庚申窯のすぐ裏手はお隣の畑になってまして、元々斜面の土地だから人の住むところや畑ごとに段々になっているのですが、その段差の石垣にはかなり立派な葛が張り付いてて、ただ今白い花を咲かせています。

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白い花弁がくるっと丸まって五枚ついてるこの花は 結構香りが強く、花!って感じの匂いがしますね。花屋さんみたいな香り。まあ私の嗅覚だからあてにはできませんよ。

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この石垣の高さが私の身長より高いくらいで、記憶のなかでは石垣の上半分くらいまでしか覆われてなかったから、ここ最近でぐんぐん成長しましたね。

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この石垣の下には粘土作りの水をほぼ100%まかなっている山からの水路があって、常に水が流れています。

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で、最近この水路をまたいでこちらまで根を伸ばし始めてる斥候がおりまして、多分放って置いたらこの水路の表面が覆われて、根だけ水中に下ろして水耕栽培みたいなことになるんじゃないかしら。

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というかここ最近で こいつがぐんぐん大きくなったのは この水路に根が届いて水をぐびぐび吸収できるようになったせいなのでは!?

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私としてはこういうのは自然のままに放っておきたいところですが、あんまり放置すると石垣が崩れる危険性もあるのでいつかは対処せねばなりません。


なかなかアグレッシブでぐいぐいなこの葛の名前はテイカカズラと言うそうです。漢字で書くと定家葛で、名前の元になったのは藤原定家(ふじわらの ていか / さだいえ)のとあるエピソードから。


藤原定家は平安時代から鎌倉時代に生きた貴族であり歌人です。その定家が 後白河法皇の三女で、若くして斎院(さいいん:賀茂神社に奉仕する皇女)になった式子内親王(しょくし ないしんのう)との禁じられた恋を密かに育んでいたと言うことが定家の日記から推察されています。


そんな二人の死後、内親王を忘れられない定家の思いが葛になり、内親王の墓に絡みついたと言う伝承から、この葛をテイカカズラと呼ぶようになったそうです。まあいずれも噂のような言い伝えではありますが。


そんなお話が室町時代の能作者 金春禅竹(こんぱる ぜんちく)によって能の演目になりまして、そのタイトルが「定家」なのですが、古くは「定家葛」というタイトルだったみたいです。


「定家」のざっとしたお話は、テイカカズラの巻きついた墓の前を、旅の僧が通りかかると 女が現れて、生きていた時の恋のことと、死んだ後も自分を縛り続ける相手の執念について語り、成仏したいと助けを求めます。

この時の藤原定家の執念を表すのに「邪淫の妄執」という強烈な言葉を使っておりまして、人生で一度は使いたい言葉ですね邪婬の妄執。


内親王は斎院なので神に使える身ですから、恋のあれこれは本来タブーなんですね。だからそのことも愛欲地獄に堕ちるという これまた強烈な言葉で表現してくれてます。


そんで頼まれちゃあしかたねえっつって僧がお経を読んでいくと、だんだん定家の呪縛が弱くなり、ついには自由に動けるようになって内親王は報恩の舞を舞います。

その舞は解放の喜びが満ちており、内親王はそのまま成仏する、かと思いきや また墓に戻っていきます。

墓にはより一層テイカカズラが巻きつき、内親王は再び愛欲地獄にとらわれて演目は終了します。


能についての話もさることながら藤原定家自身もなかなかに反骨精神のあるロック野郎でして長くなりそうなので次に続きます!


おれ

高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目