5月31日 晴れ
本日のBGM Otis Redding
今朝起きたら 靴ぬぎの所にツバメの卵の殻が落ちていて、以前 糞害を軽減するために段ボールを設置するなどしていたツバメ夫婦の卵が孵ったみたいです。
くつぬぎとは反対側の壁にツバメの巣があるので、この卵の殻はツバメ自らこの場所に置いたということになります。ツバメは準備期間中 1日に1つ卵を生むそうですが、卵の孵る日数に差があると、一番若いヒナは成長競争に不利になるので、卵から孵るのは全部同じくらいのタイミングなんだとか。
だがら卵の殻ももっとたくさんあるはずだけど、このくつぬぎのところと、もう一ヶ所必ずそこを見る というところの2ヶ所以外に卵の殻はなく、どうもその他のはもっと遠くへ捨てているようで、この2つだけを わざわざ人間の目につきやすい所に置くというのは完全にメッセージが含まれていると思います。
つまりこの卵の殻は住む場所を提供している我々に対して
「あ 大家さん どうもいつもお世話になっておりますー この度皆様の御援助の甲斐もあって、どうにか無事に子を授かることができましたので ご報告いたしたいと思っておりました所、ほら、私たちって人語が不得手じゃないですか。口の構造的に。まあ あなた方がもっと鳥語を理解するよう努めるべきなんじゃないの、などとは申しませんが、その代わりこちら つまらないものですが こちらの卵の殻、ね、これ、倅が私の体内で卵黄の時からずっと一緒に過ごしてきた大切な卵の、ね、殻、ね、この卵の殻をお目につきやすい所に置かせていただきますので、聡明な大家さんのことですから この意図を汲んでくださることと思います。今後ともバリケード役よろしくお願い申し上げまーす☆」
ということですよね。
これはなかなかびっくりする行為です。そもそも人家に巣を作って他のプレデター達を寄せ付けないという策をとっているわけですからその時点ですごい。一体いつからそんなことをやるようになったのか。
もし仮にツバメを食べないタイプの熊がいたとして、その熊の家にツバメが巣を作ったとしても、熊に気づかせるような位置に卵の殻を置いたりはしないですよね。たぶん熊は卵の殻から「バリケード役よろしく☆」という意図を読み取れないでしょうから。
ということはツバメは、人間が卵の殻を見るだけでどういう状況かを理解できる、と いうことを理解しているわけですよね。これは大変に高度なことをやっているのではないでしょうか。
人間とツバメの歴史がどのくらい古いのかは知りませんが、生物がとある行為を本能レベルまで刷り込まれるには5万年から20万年くらいかかるみたいです。しかし人間とツバメがそんなに古くから一緒にいたとは考えにくいです。
ということはツバメのこの行為は全て「学習」のレベルでやっているということでしょうか。そうだとしたらかなり知能が高いような。でももしかしたら たまたまそういう形質の濃いものだけ生き残った的なやつで説明されてしまうのかしら。
とにかくわかっていることは「ツバメはあざとい」ということですね。こいつらも言っちゃえばパラサイトみたいなもんですから、普通にやってたら我々人間に排除されるから「かわいげ」でもって生存競争を有利に進めているわけで、そのあざとさの最たる例がこの卵の殻の付け届けになるのではないでしょうか。
まあ私はあざといのは大歓迎ですから別にいいんですけど、その割には近寄ったら全力で逃げるし、カメラを向けても全力で逃げるし、外から帰ってくる時も私の姿を認めた途端に宙返りして全力で逃げていくし、私は私で「燕返し見事なり」などとのたまうし、ツバメさんその辺もうちょっと あざとくやってくれてもいいんじゃないのかい、と ツバメに肩とかに止まられて、周りから仙人っぽく思われたい私でした。
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目