2020/06/14 02:07

6月13日 雨

本日のBGM Georgie Fame


画像1

今日は前からやってみようと思っていた、カオリンのお皿を使った時計が焼き上がりました。


このカオリンというやつは陶芸の世界では釉薬の原料の一種として扱われるんですけど、知り合いの方から「カオリンだけでも焼き物が作れるよ」と教えてもらい、カオリンは真っ白な鉱物なので白色度の高い色を生かして 最初に作ったのがこの「17」というお皿です。

17のコピー

カオリンの無垢な白さには、あまり既存のイメージが持たれていない この17角形の平皿が合うと思って作ってみたもので、何で17角形なのかというと、まず偶数は、私の中で止まるイメージがありまして、8角形とか12角形とかは落ち着いちゃっているんですよね。安定感あるというか。


一方 奇数角形は転がっていきそうなイメージで、私の中では動的な形なので、奇数角形の方が落ち着いてない分、回転するエネルギーがありそうな感じがするのと、既存のイメージが持たれていない、 っていうことはオリジナル感、っていうことは素数の方が良いだろうってことで、1以外の整数で割り切れない数である素数(2,3,5,7,11,13,17,19,23・・・)になりまして、


あとはミーハー心で、定規とコンパスだけで作図できる素数の多角形は今のところ5つしか見つかっていないんですけど、そのうちの一つがこの17角形だったからこのお皿の形が17角形になりました。

ちなみに定規とコンパスで作図できる素数の多角形は、3角形、5角形、17角形、257角形、65537角形が確認されているそうです。この中では17角形が一番いいなと思いまして。というかもう必然で。


いや〜257角形で既にほぼ円ですから、65537角形って円でしかないと思うんですけど、ちなみに正17角形が作図可能かどうかは18〜19世紀の大数学者ガウスが19歳の朝、起き抜けに「あ、17角形コンパスでかけるわ」と 寝ぼけ眼で思いついて、そのまま証明しちまったものだそうですが、

その作図ではコンパスや定規で線を引く工程を64段階踏まないといけなくて、一応私もチャレンジしましたが うまくできませんでした。1カ所よくわかんなかったのと、鉛筆の太さ分で ズレが出てくるみたいですね。


こういう「定規とコンパスによる作図が可能であることの証明」というのは実際の作図方法を思いつくことではなくて、数式での証明をすることであって、65537角形なんかは、いわゆる「理論上は可能」というやつなんですけど、

当然これを実際に作図したろかいって人がいまして、この作図方法を10年かけて調べ上げ、その計算方法をまとめた原稿が200ページを超えるという大変膨大な作業の果て、この65537角形の具体的な作図方法が人類の手に入りました。これで定規とコンパスだけで正65537角形が描けるわけですよ。17角形の作図手順が64段階なら、6万以上角形の作図手順はどれだけのものになりますやら。。


これに関して「え なんで?」とか「え ひまなの?」などとは思うだけに留めて、決して言わずにおいて欲しいと思います。数学はロマンなのです。現在ではカンピュータで簡単に製図できますが、そんなことは関係ないのです。数学はロマンなのです。そのカンピュータだって過去の偉人たちが築き上げた数学の叡智によって動いちょるのです。


大変話がそれましたが、そんなロマンティックな話の後で矮小な話題になりまして、その17角形のお皿を時計にできんかなと思って、やってみた作業工程がこちらです。

画像3

画像4

画像5

画像6

まあ作るもなにも中心に穴開けて数字書いただけなんですけどね。カオリンによる白い素地なので絵具の発色がいいのですが、私としてはちょっと気に入らない仕上がりなので、また機会があったらもっとかっこいいの作ってみたいと思います。来年くらいに。

今回のは できるかどうかだけ知りたかったので、とりあえず というやつですね。私は数式での証明よりも実際にやってみる方が性に合ってるみたいです。


おれ


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目