2020/07/03 01:21

7月2日 晴れ

本日のBGM Chet Baker


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これは「キャンバス」というシリーズのお皿でして、「料理を描くためのお皿」ってことでそんな名前になっています。この白の真四角がベースのものになるんですけど、色違いもいくつかあります。こちらは↓黒のキャンバス。

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作ったきっかけは、前に箱庭をテーマにしたハコニワ展というのをやった際に、箱→四角→四角いお皿って感じで作ったものだと思います。安直ですね。数合わせでしょうか。

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まあこの形と色に関しては 作為が入る余地がほとんどないので、わざわざ作らなくてもいいような気もしますが、でもこういうシンプルで どこにでもありそうなものって 実は意外となかったりするんじゃない?ってことで作ったような気もします。

シンプルな形のものは、質感が そのお皿の印象を左右するので、なるべく素材感をしっかりしたものにしようと、粘土や焼き方に気を使って作っていますね。

磁器のお皿と差が出るように、土ものっぽい暖かみや、白の中にも焦げ感とかが出るよう意識しています。真っ白よりも、少しくすんでる白の方が、むしろ背景としては優秀な気がします。

個性はないお皿ですが、その分 汎用性は高いそうで、使い勝手は良いみたいです。私の印象はまさにフラットな感じですね。当たり前すぎる形なので。


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こっちはまた別の色違いのやつで、前に作ったものだから角の丸みが強いですね。あまり尖ってると欠けやすくなりますからね。陶器は弱いので。

この色は、あがの焼の「緑青(ろくしょう )」という緑色の釉薬を、お皿のおもて全体にコンプレッサーで吹き付けて酸化で一度焼いたあと、低い温度で焼き直して出した色になります。

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でもお皿自体をフラットにするために、一度釉薬をかけずに還元で焼き締めているので、素焼きも合わせたら合計4回焼いていますね。いやーそう考えたら結構手間かかってますな。ちなみに白いキャンバスは2回で済みます。黒は3回。

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しかしこの色は独特で、濃い緑の中に明るい緑が無数に浮いていて、こういうのは釉薬ならではの発色だと思います。あと焼き直しにより質感がサラサラしていて けっこう心地よいのと、角度によっては釉薬の表面が虹色みたいにきらめきます。

低い温度で焼き直したため、炭素皮膜がどーたらみたいなことなのかしら。オリジナル性は高い釉薬ですね。好き嫌いの分かれる色でもありますが。


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こちらは釉薬ではなく、色の違う土を練り込んでこんな模様になっているものです。その技法の名も「練り込み」 そのまんま。

↑背景が木だとすげー馴染みますね練り込み模様。でも木にはこんな模様のパターンはないんですけどね。色の揺らぎ具合が自然物のものと近いから 木のように感じるのでしょうか。大理石柄でもあります。

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白背景ではこんな感じです。こちらは赤土が多めで、よく焼きしまっているやつで、何度も焼くから赤土の中の鉄分が溶けて、ちょっと金属っぽい光沢が出ています。大変渋かっこいい状態ですね。こうなったときの土の質感は陶器ならではのものがあると思います。

このお皿は白のキャンバスとは違う形をしていまして、ちょっと立体的な作りになっています。

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このお皿、実は おもて裏 使えるように作られたもので、ひっくり返すとフラットなお皿ではなくて、フチが少しあるお皿になります。一旦厚めに作って、裏側を彫り出しているのですが、土を練り込んで作っているので、彫ったり切ったりしてもまた模様が出てきます。

その裏側の写真は撮り忘れたんですけど、結局このフラットの面しか使わないということで、少し高さがあるだけのお皿になりましたね。

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表でも裏でもひっくり返しやすいよう、お皿のふちが斜めに切れ込んでいます。そのためお皿として機能する面は少しだけ長方形になっていて、置く向きによって印象が変わるお皿です。また. 作るのが大変めんどくさいお皿でもあります。


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これも上と同じく練り込みなんですけど、この色の加減はオーダーされたもので、赤土少なめ、白と中間の土多めという配合で作ったもので、土ごとの色の差がはっきり出過ぎないように砂を表面に叩き込んで、表面を砂混じりの質感にして、色の印象も統一感が出るように作られています。

このお皿は四方がハネていまして、横から見るとこんな感じで、

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この形に仕上げるためには、粘土で作っているときにフチをあげてはなりません。むしろ粘土の時は まっすぐフラットまったいらに作って、そのまま素焼きします。

素焼きの状態では一番上のキャンバスと同じ ぺったんこの状態なのですが、これを本焼きするときに、四方に柱を置いて、中心を浮かせた状態でしっかり焼くと、このような自然な曲線を持ったお皿ができます。

つまり焼いているときに粘土は柔らかくなるんですね。そのために薄く作っておいて、熱で曲がりやすいようにしています。柱の高さを全て同じで焼いているので、それぞれのお皿の曲がり具合も均等で、わりとスタッキング性は良いです。このお皿は少し小ぶりで、和食とかの方が相性良いかもしれません。


あとキャンバスのお皿はひっくり返して使うデザインで、あと2例くらいアイデアがあって作ろうとしていましたが、技術が追いついていなかったので実現しませんでした。またいつかチャレンジしてみたいですね。キャンバスというお皿たちでした。



おれ

高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目