2020/07/04 01:09
7月3日 くもりのち雨
本日のBGM The Crusaders
今日は風が強くて、風嫌いのわたしにはうっとうしい日だったんですけど、風が強いだけじゃなくけっこう寒くてですね、寒いのは風よりも嫌いなんですけど、
祖母によると稲の苗床を作っている時期や 田植えの済んだ後なんかに寒さが戻ることを昔は「田植え寒」とか「のうしろかん」とか言っていたそうで、苗代寒ってことでしょうか。方言でしょうね。
田植えの時期も今よりも もっと遅かったそうで、その当時は人の手で植えていましたから、お金のある農家は「ちっこさん」という田植えをやってくれる女性たちを集団で雇って苗を植えていたそうです。
ちっこさんは筑後さんがなまったもので、筑後の人達が集団でやってきていたそうです。ほとんど若い女性だったそうですが男性もいたとか。
あるいは十数軒の農家で協力して、お互いの田んぼを順に回ってみんなで田植えをしていたそうで、となると一日で一軒の田んぼとしても半月くらいかかりますから、そのへんも時間がかかってたそうです。
田植えの上手な人は奥様連中のスターだったそうで、どこどこの奥さんはぽんぽこ苗を植えてまわって、まるで田んぼの中で踊っているようで、田植えの時期の人気者だったそうです。
祖母は苅田という北九州の町の方から来ましたから、当時の田舎と町では全然暮らし方が違っていたそうで、来た当初は慣れないことも多かったみたいです。現在は便利になった分何かを失ってしまった。。などとエモい感じを差し込みつつ、
昨日焼いた窯で出てきたお皿がかなり良くてですね、これらは注文で作っていた小皿の、釉薬の発色があまり良くなかったお皿たちを、再び釉薬をかけて焼いたもので、庚申窯では「焼き直し」と言っていますが、焼き直しの小皿たちです。
焼き直しをすると、もとにかかっていた釉薬と、上からかけた釉薬がユニークな感じに混ざって複雑な模様になりがちなのですが、今回のは全て同じ釉薬の組み合わせにもかかわらず、様々なバリエーションが出てきまして、せっかくなので一通り紹介させていただきたいと思います。
こちらは黒いものの中心に青がたまったもので、ギャラクシー感のある小皿です。寄りで見るとこんな感じで↓
青の中にいい具合に黒が弾けてて、それが奥行きを生んでいますね。この白い点々は多分ピンホールでしょうか、星っぽく浮かんでいますね。これは元の釉薬が濃くて、うまく溶けていなかったものを焼き直したものになります。青色に深さがあるのがいいですね。
こちらは左側のスパッと切れた 釉薬の境目がすごくいいやつですね。部分食みたいな感じ。カーブが逆ですけど。普通に焼いてもこうはならないんですよね。
この小皿は上と同じ釉薬なんですけど、最初に焼いた時に青が少なくて、黒しか発色してなかったので、もう一度上から青をかけて焼いたらこんな感じになりました。
おそらくこの青がしっかり溶ける温度になってなくて、青の部分だけが黒の表面をすべって、青同士でギュッと縮んだんでしょうね。1箇所だけ他と違うのは、そこが窯の中の火口に近かったとか?
こちらも一つ前と同じパターンのやつなんですけど、少し還元がかかってるんですよね。灯油窯の酸化で焼いたんですけど、火の通りが悪かったみたいです。酸化焼成、還元焼成ってのは酸素を入れるか、入れないか という異なる焼き方のことですね。完全燃焼と不完全燃焼みたいなものです。
窯の火の通りが悪い(不完全燃焼な)方が、釉薬は面白く変化します。ちなみに青は還元されるとピンクっぽい色になります。このお皿は両方の色が出てて 星雲みたいな感じ。
これは左半分と右半分で色が違っていまして、左が酸化で、右が少し還元かかっていますね。灯油窯には火口が2箇所あるんですけど、どちらかの火が強かったみたいです。
これはまたガラッと変わって、窯の下の方に詰めてたやつですけど、下の方が温度低くて還元もかかりやすいのでこんな感じになったのでしょうね。
普通 焼き直しの品は一度溶けてるものだから 融点が下がるんですけど、今回のはもうちょいしっかり焼いた方が良かったみたいです。でも焼きが甘いおかげでこの色になったわけで、どっちがいいかは好みですね。気に入らなければまた焼いたらいいですし。
こちらは一つ前と同じパターンですが、酸化で焼けていますね。このひび割れみたいな感じは焼き直し特有のものです。釉薬がお互いを引っ張ってるんですね。
普通は土の上に釉薬なので、釉薬が土に馴染むんですけど、焼き直しは釉薬オン釉薬ですから釉薬の上を滑ります。でもこれはこれで渋い感じ。
あとはその他のバリエーション↓
焼き直しは本当にその都度 色が違いまして、コントロールの外にいるので、こうやってできたお皿も、その時だけのものになります。一期一会ですね。またエモい感じ。思春期のかほりがしますね。
ちゃんと実験を重ねて 検証すれば 意図的にこのような色を出すこともできるのですが、それは私には不向きなので今後とも適当に行きたいと思います。適当のおかげでサプライズもありますしね。
並べてみると、違う色ですけど 元は同じ釉薬だからなんとなく統一感がありますね。どちらがお好み?
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目