2020/07/10 03:09
7月9日 くもりときどき晴れのち雨
本日のBGM Alejandro Camara
今日は取手をつける作業がありまして、相変わらず取手をつけるのは時間がかかるなあ めんどくさいなあ やりたくないなあと思うのですが、今日取手をつけてたのはこのようなカップでした。
これはまた鍋用のやつなんですけど、前回作ったものがどうも小さかったようで、大きく作り直しています。私はビールグラスとか湯呑みでも小さめが好きなので、手に持つ器は小さくなりがちなのですが、鍋の野菜とかけっこうでかいということで、口を広く、出汁が溜まりやすいよう底を絞った形にしています。
まず取手をつけるには高台を削る必要があるんですけど、手前が高台を削ったもので、奥の「削り台」に逆さまにかぶせられているものが削る前のやつですね。
削り台の一番上には粘土が貼り付けてあって、その粘土の摩擦のおかげで、削り台を回転させた時に器も一緒に回って 高台が削れるんですけど、その貼り付け粘土が乾かないように、取手をつける間は 次に高台を削るやつをかぶせて乾燥を防いでいます。
普通はまず全部の高台を削り終わってから、次に取手をつける作業だけに取り掛かるのですが、私の場合は一つずつやるので、そのように削り台が乾燥しないようにしています
これが今回の取手ですね。器がでかいし、中に入れる食材でまた重くなるので、指が2本入る形にしてるんですけど、ちょっと耳っぽい感じで 途中にくびれがあるのは薬指が当たる部分です。
2本指で持つ取手の場合は 薬指の受けがちょうどいいと、体感の重さがかなり変わってくるので、今のところ この形状がいいんじゃないかなと思っています。
取手の下側はあらかじめ長く作っているので、押し潰して短くします。この時に本体との接地面積が大きくなるようにしておきます。
取手と本体との接着剤の役割を担うのが 同じ粘土でして、このドロドロの泥のことを庚申窯では「ドベ」と言っておりますが、いかにもドベって感じしますよね。
ドベに水分が多いと接着剤として弱いので、なるべくドロドロが良いです。でも滑らかなドロドロが良いです。均一ドロドロで。塊があるようなドロドロは良くないです。
今までこれを塗るのに筆を使っていたんですけど、歯ブラシがあったので使ってみたらなかなか使い勝手が良くてですね、これからは歯ブラシで行ったろかと思っております。
歯ブラシのいいとこは粘土に傷をつけて、ドベが付着する表面積を増やしてくれることと、毛が強いのでガシガシ洗っても大丈夫だというところです。筆にドベが残ったまま乾くと、それを解きほぐすだけで毛がバンバン抜けて行きますから、この作業には丈夫な歯ブラシがいいんじゃないかしら。
取手にたっぷりドベをつけてしっかり押し付けます。はみ出すくらいでちょうど良いです。この時にドベが少なかったり、取手や本体が乾きすぎていると、取手がポロっと落ちやすくなりますので、ちょい柔らかめの時にぎゅうぎゅうに押し付けましょう。
この時に本体が薄造りだと歪んだり破れたりするので、その辺がジレンマですね。やっぱり厚みがある方が丈夫で取手もくっつけやすいけど、重くなってしまいますからね。
はみ出た余分なドベを 木のナイフで取り除きつつ、取手と本体の境目を潰します。これをしっかりやらないと境目にヒビが入りやすくなります。
その結果がこう↓なるんですけど、まだ終わりではなくて
取手はなるべく重心に近い方が良いので、取手と本体の距離を近づけます。
下の部分をギュギュッと押しつぶしながら曲げて、本体に近づけてこんな感じになります。この時に下の部分を曲げて縮めるのは、曲げた方が強度が上がりそうだからです。なんか平板よりもトタン板の方が強いみたいに。直線よりも波で。
指を合わせるとこんな感じですね。まだ取手も本体も柔らかいので取手を持ち上げてチェックすることができないのですが、取手の角度によって手首の返り具合も変わるので、その辺もすごくちょうどいい角度っていうのがあるんですよね。これがそうかはわからないんですけど。
取手付きの器は乾燥を急ぐと歪んだりするので、発泡スチロールの中で じわじわ乾かします。取手と本体の乾き具合を整えるためでもありますね。こんな感じで取手付きのやつは作られます。
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目