2020/07/28 02:59
7月27日 くもりのち雨
本日のBGM やまがたすみこ
庚申窯の工房の窓辺は虫達の死の墓場になっておりまして、というのも窓のすぐ外に電灯があって、走光性の虫達は夜になると この電灯目がけて飛んでいくわけですけど、
夜 工房の中に入り込んだ虫達は、その電灯の光に飛んでいくものの窓があるので、窓に何度もぶつかったり、窓より先に進むことができずに衰弱死したりするため、窓辺には虫の死骸がたくさん転がっています。
この虫虫デスターミナルに今日アブがいまして、どうも夜間に何度も窓にぶつかったせいで羽の片方が折れてうまく飛べないみたいで、アブの飛行能力はえぐいですし、刺されると嫌なので 普段は見かけた瞬間に履いてるサンダルを手にとって臨戦態勢に入るんですけど、
こんなに目が青くて綺麗なアブは初めてで、しかもほぼ無傷なのに動けないというのも珍しいので、この機会にじっくり観察していました。
こうみると昆虫の複眼ってヘルメットかぶってるみたいで、もう全然表情とかわからないし、意思疎通が全く不可能な雰囲気をビンビンに醸していますよね。これはみんな虫を嫌いになってもしょうがねえですよ。もともと別の惑星から来たとか言われても納得しそうです。
しかしこいつ複眼とはいえ頭のほとんどが目なわけで、アブの飛行能力は高いですから そのために目も大きく発達してるんでしょうね。他の昆虫たちも よく見たらこんなに目はでかくないですからね。アブちゃんデカ目です。いや、現在はデカ目崇拝の文化が広く浸透していますから アブ様と呼んで然るべきかもしれませんね。
飛行性能が高いだけあって体の作りもレーシングバイクみたいな無駄のない流線形で、「もう俺は前にしか進まないぜ!」というような強い意志が感じられます。身もがっしりしてて力強そうですが、でもアブって叩き潰したら案外肉肉しくなくて、なんかペシャっと潰れる印象があるので、見た目よりも軽い作りになってるのかもしれませんね。
アブに刺されると痛い、などとよく言いますが、正確にいうとあれは刺してるわけではなくて、ストローみたいな口吻をねじ込んで血を吸ってるわけなんですけど、ここ福智町の名前に由来になった福智山の麓には「白糸の滝」という全国の何十か所かの滝と名前のかぶっている滝がありまして、小中学生の時などは夏休みに友人たちと自転車で滝まで登って、滝壺に飛び込んだりして遊んでいたんですけど、
滝に来ると必ずアブがいて、水着ですからしょっちゅう背中とか肩とかにアブが止まってきて、たまに血を吸われたりするので 大変に厄介な虫だなあ と思っていたのですが、よく考えるとそういう経験は滝に行った時くらいしかなくて、庚申窯でもアブはほとんどいないくらいなんですけど、その理由は 水の綺麗なところでしかアブは生きられないから だそうです。
なるほどデカ目先輩はオーガニック先輩でもあったのですね。オーガニック崇拝の人もアブ様と呼んだ方がいいかもしれないですね。
アブ様は色が綺麗でデカ目でオーガニックでレーシング仕様でスピードスターですから 男女どちらからも支持される要素を持っているわけですけど、刺されると結構痛くて、自然な場所に行った際は なるべく刺されないようにしたいところですが、
シマウマの縞模様の研究の中で、あの縞模様が 実はアブを寄せ付けない効果があるということが判明したそうで、何やら光の反射の関係でアブ様のデカ目があの縞模様にはうまく着地することができないようになっているらしく、これを利用しない手はありませんぞ。
まず白黒のボーダーあるいはストライプの服を上下で着てもらって、露出している肌を白塗りにして、そのあとマジックで縞模様を描いておけばアブを遠ざけることができると思いますので、夏に自然の中で遊ぶ予定のある方はぜひ参考にされてください。その際のマジックにゼブラを選ぶ小洒落たセンスも欲しいところですね。
高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目