2020/08/13 05:27

8月12日 くもりときどき雨

本日のBGM George Benson - My Woman's Good To Me

子猫〜25日目〜

画像1

このなみなみ小鉢、まあ名前は適当なんですけど、この小鉢は父が作ったものですが、作ってる時から結構いい感じだったので紹介させていただきたいと思いまして。

これはオーダー品として作っていたものでして、昔 あがので この器を買ったという人のお子さんが、家で使っていたものが割れたりして数がなくなってきたので 同じものをもう一度作って欲しいという感じだったと思いますが、

そのオリジナルの器には銘が入っていなくて、作り手の特徴もあまり出ていなかったので どこの窯元で作られたものなのかわからず、っていう時には大体庚申窯に ご相談していただきます。

画像2

庚申窯は節操ない感じなので 注文されたら大概のものは作るんですけど、まあそのせいで私は現在進行形でご注文のものをお待たせしているわけなんですけども、ちょうどこの器に使われていた釉薬 「緑青(ろくしょう )」 の色が庚申窯の緑青と似た色合いだったので その辺も庚申窯にお話が来た理由だと思います。

この緑青という釉薬は あがの焼の窯元なら大体どこも作っていまして、それぞれの窯元で微妙に色が異なります。釉薬の調合とか、使ってる土の成分とか、焼き方や窯のクセなんかで色が変わるので、同じ釉薬なんですが「その窯元の緑青の色」 というのがあるんですよね。

画像3

私は小さい頃から 緑青ってあんまり好きじゃなかったんですけど、成人してから評価が変わって、今ではかなり好きな釉薬の一つです。

なんで好きじゃなかったのかというと、あまりにたくさん周りにあったからでしょうね。昭和の頃はこの色がすごく売れていましたから、とにかくどの窯元も作ってましたし、どの形の器でもこの色で作っていたということで、その人気が落ち着いた後の ぶり返しで 評価が下落してるような雰囲気が私の子供の頃にあったというのと、

もう一つはこれは子供向けの感性じゃないというか、子供に塩辛出してもよう食べんみたいなもんで、この色というのは多分他に いろんな味のものを食べてきて、そのどれとも違うということで面白がれる珍味的なもので、だからいろいろな評価軸を持ってないと好きになれない色なんじゃないかなあと思います。人によって好き嫌いの激しい色でもありますね。


でこの形なんですけど、私はフチがなみなみになっているお皿が結構好きでして、乾かしてるときの粘土の質感と合わさるといい感じなんですよね。

画像4

画像5

この写真はカメラが壊れてた時に取ったやつなのでかすんでいますけど、こんだけかすみを作れるカメラというのも貴重な気がします。この なみなみがたくさん並べられるとなんかいいんですよね。柔らかさを感じますし、マカロニ感あって好きです。土の色が2種類あるのはそれぞれで釉薬の色が変わるからですね。

緑青の緑色も土によって大きく変わるので、どっちがいいかを選んでもらうということで土を分けて作ったんでしょうけど、オリジナルのやつはグレーの方の土っぽい感じでしたので そちらが選ばれたみたいです。

冒頭の写真のやつは茶色い土の方ですね。この茶色い土、赤土と言うんですけど今回の小鉢は赤土の緑青の発色がとてもいい感じでした。あの発色の感じは長く使うほどに綺麗になっていくタイプのやつですね。緑青も綺麗になるタイプとそうでもないタイプがあります。


画像6

釉薬のかけ方はこんな感じでして、フチのグレーの部分が緑青で、焼いた時に下に流れて行きます。


フチがなみなみだと緑青の流れ方も変化が出てユニークなものになります。あとなみなみだと、箸を置いても動かないので その辺も評価高いですね。なみなみの作り方も何パターンかあるので、また作る時にご紹介させていただければと思います。


画像7

高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目