2020/08/14 03:14

8月13日 晴れ

本日のBGM Billy Paul - Me and Mrs. Jones 

子猫〜26日目〜


私は大体いつも祖母とお昼ご飯を食べているんですけど、その時に祖母が見ている中国ドラマか、テレビで放映された映画の録画などを見てまして、食事の間だけ見るので15分刻みぐらいで映画を見ているんですけど、以前金曜ロードショーで放送されたオーシャンズ8を見終わりまして その感想を書いてみたいと思いまして。


オーシャンズ8はオーシャンズシリーズの女性版リブート作品ですが どういう映画なのかはこちらの予告を↓

オーシャンズ8予告

画像1

フランク シナトラ主演のオリジナルのやつは見たことないんですけど、オーシャンズシリーズはどれも好きでして、こういう盗人モノではついつい盗人側に肩入れしちゃうんですけど、それはたぶん盗人モノというのには対権力、対体制という構図があって、

「悪巧みをして儲けようとする人が犯行を企てようとしましたがやっぱりダメでしたねトホホ」みたいな "常識教えてあげます作品"が多い中、オーシャンズシリーズはその反対で、悪いことをやっても さくっと成功しちゃうという痛快さが心地良く、まあそれによって我々はまた反抗意欲を満足させられて、平常の生活を送ることになるんですけど、

今回の映画では冒頭で主人公の女性が出所して、仲のいい看守に「あんたこれからどうするの?」「私今45ドルも持ってるからどこにでも行けるわ」というふうに始まって(最初の方適当に見てたので細かいところは間違っていると思います)、

タクシーでニューヨークに着いたら 口八丁手八丁でデパートのブランド品を堂々とパクって、高級ホテルにもタダで宿泊しちゃうという一連の流れが大変に心地よくてですね、これはもう居残りですなと。


居残りというのは落語の演目で、「居残り佐平次」とか言ったりするんですけど、こちらの主人公も金がないけど口八丁手八丁で遊郭の若え衆を騙して散々遊んで、金がないことがバレて遊郭に居残りさせられるんですけど(居残りというのは支払い能力がないやつを遊郭に閉じ込めて、何らかの形で支払いをさせるまで物置部屋とかに居続けさせる、というやつ)、

居残りさせられた後も全く悪びれず、持ち前の機転と人当たりの良さで花魁とか客に気に入られて、しまいには「なんか場がしらけてるな。おいちょっと居残りのあいつを呼べよ」ってって太鼓持ちみたいな感じで人気者になって、その挙げ句遊郭のオーナーから「お前さんもう金のことは忘れてやるから帰っていいよ」

と言われるんですけど、ここで佐平次はタダでは帰りませんで、また口から出まかせでオーナーを騙して、逆に着物と金をせしめてホクホクで帰るというところで落語は終了となるんですけど、

この居残り精神がオーシャンズシリーズにも通じるなと思いまして、何も持たない人間が、頭の良さと罪悪感の欠落によって社会のシステムをするすると騙して、そこで成り上がっていく様が、社会のシステムに服従している人間にとっては大変に痛快で楽しいのですが、

ここで重要なのは騙している側が「遊んでいる」ことでして、犯行の一連を遊んで楽しんでいることで佐平次もオーシャンとその仲間たちも、いやらしさが消えて 粋で品がよく見えて、そんで物語を見た人の反抗意欲を上手に満たしてくれるという機能も持ち合わせているんだと思います。


その粋な遊びを女性もやっていいんだ ということを言っているのがこのオーシャンズ8なわけで、私は居残り佐平次の 何も縛られずに己の才覚だけを頼りに暮らすという生き方は 男の理想の生き方の一つだと思っていたんですけど、それは別に男に限定されなくて、女の理想の生き方の一つでもあるんだということをオーシャンズ8を見て思いまして、

この映画を見るまで そのような生き方を男限定で考えていたということは、いかに無意識下で性別によって物事を分けて考えていたのか ということを自覚させられまして、もう男は とか女は とかで語る時代ではないと頭で思いつつ、無意識の部分で自分でも気づかない性差による役割の押し付けが実はあるんだよ、ということをこの映画は教えてくれます。


その2に続きます。



高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目