2020/08/31 07:56

8月30日 晴れ

本日のBGM Superfly - MANIFESTO

子猫〜43日目〜

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映画「翼よあれがパリの灯だ」の中で リンドバーグは神経質なまでに機体重量を軽くしようとしますが、実際もそうだったみたいで、前回出てきた六分儀も こんなもん1人で運転しててよう使えませんわ、ていうか正面塞がってるし!ってことで持って行かず、無線機もパラシュートもいらねえ っつっておろして、

お守りのペンダントみたいなのも「重くなるから君に預ける、もし死んだらお袋に渡してくれ」って友人に預けて、地図も必要な箇所だけ切り抜いたりして とにかく軽さにこだわります。飛行機というのは当然軽いほうが飛びやすいわけで、これまで大西洋横断に挑戦して失敗した例を見ても重量オーバーによるものが多く、

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というのも当時のエンジンだから今と比べると遥かに燃費が悪くて、プロペラを回して その推力で飛ぼうってんですからそれなりの馬力が必要で、となるとニューヨークからパリまでの5,800キロを飛ぶのには大量のガソリンが必要になります。

飛んでるうちにガソリンが減ることで軽くなって どんどん飛びやすくなるんですけど、離陸時はガソリン満載で一番重く、危険な状態です。

実際に大西洋横断に挑戦した人たちの中でも うまく飛び立つことができないまま滑走路の端まで行ってしまって 事故った機体が炎上して乗組員が死亡したケースもあります。この辺は有人ロケットの発射事故と似ているところがありますね。


そんな感じで余計なものをどんどん取り除いていって、最低限これだけ という荷物だけ持ち込み、乗り込んだコックピットはこんな感じでして、

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エンジンのすぐ後ろにガソリンタンクを置くことで、タンクを大容量にすることができ、飛行するのに十分なガソリンを積むことができたんですけど、その結果 前は見えない仕様になってしまって、

左右の窓から顔を出すか、潜望鏡から前を覗くんですけど、それとは別に頭の上にあった磁気誘導コンパスを見るための鏡が この黄色い丸のところでして↓

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これは本来用意してくれた鏡をリンドバーグが「コンパス見るだけなのにデカすぎて重そうやからイヤやー」っつって 誰か鏡もっとらんのけ?と呼びかけると、出発を見に集まってた人たちの中から女の子が1人「私ので良ければ」ってって手鏡をくれます。

それを貼り付けたのが上の黄色いところになるんですけど、この映画の中でまともなセリフのある女性のシーンはここくらいでして、他にはほとんど女性は出てきません。野郎ばかりです。

この映画は祖母と一緒に見ていたんですけど、祖母は綺麗な女性が出てこないとあまりドラマを見る気にはならないので、ここでようやっとヒロイン登場け!?と食いつきます。

しかしこの女の子は出発地点のニューヨークで リンドバーグが飛び立つのを待っているわけで、これからリンドバーグはパリへ、当時最速の方法で向かうわけですから この女の子はもう出番がないんですね。


だからなのか出発前に 見学させてやろう って言って女の子をコックピットに乗せたり、ペロペロ喋ったり、リンドバーグが飛び立った後も 女の子がフィラデルフィアに列車で帰るシーンがあったりと、女の子登場場面の引き延ばし工作が見られます。

そしてこの後はひたすら飛行機の中で眠たがってるか、昔を思い出しているかしているだけで、回想シーンに女性を登場させる手もありますが、リンドバーグの伝記映画だから あんまり実際のエピソードから離れてることを描けなかったのか、結局ヒロイン不在のまま映画は終わります。

もしかしたらヒロインみたいな相手役がいないせいで この映画は興行的に失敗しちゃったんじゃないかしら。ドキュメントとフィクションの折り合いが難しいところですね。


続きますー


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目