2020/09/14 10:34

本日のBGM Skinny Lister - Peregrine Fly


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大西洋の冷たい気流の中に入ってしまっていたリンドバーグは 何とか冷たい気流を抜け出すことができ、そこに太陽が昇ることで機体が暖められ、凍っていたセンサー類が復活するのですが、

同時に光が差し込むことで まるで死の世界のようであった真っ暗な海の上が、太陽の光によって美しく照らし出され、光を反射する無人の海面がどこまでも広がっている光景を目にすることになります。

光があることの純粋な喜びと、世界のそのままの美しさを映し出したシーンですが、太陽のもとに見えた 水平線まで誰もいない世界を目にすることで、今まさに誰も到達できなかった新しい地平を切り開いているという リンドバーグの成し遂げた偉業も同時に表現しているシーンでもあります。


夜明けの海の上を太陽に向かって飛び、夜を乗り越えた自信にも満ちていたリンドバーグでしたが、やがて太陽が高く昇って 暖かくなると、一晩中飛び続けた疲労に加え、一番困難なところを切り抜けたことによる緊張のほぐれが重なって、リンドバーグは強烈な睡魔に襲われ、ついに眠ってしまいます。

操縦桿が手放されてしまったので飛行機は旋回して じわじわと高度を下げていくのですが、頭上に設置したコンパスを見るための鏡↓、出発前に女の子からもらった手鏡ですね、

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機首が傾いたことによって太陽の光がここに差し込み、手鏡に反射した光によってリンドバーグは目を覚まし、慌てて飛行機の高度を上げて墜落を免れます。またしても太陽によるお助けですね。


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やがて飛行機はアイルランド上空に差し掛かり とりあえず大西洋横断は成功して、あとはイギリスの上を跨いでパリへ向かうだけなので ここまで来れば一安心 って感じ、なので、んじゃまあここらでサンドイッチでも食っとこか ってってサインドイッチの袋を取り出すと友人に預けたはずのペンダントが出てきます。


これは出発前にリンドバーグが お守りとして持っていたペンダントを「俺が死んだらお袋に渡してくれ」って言われて 預けられた友人が こっそりサンドイッチの袋の中に入れていたんですね。

それを見つけたリンドバーグは微笑んで服の中かどっかにしまうのですが、この忍ばせられていたペンダントは「君は死なない」と言う友人の信頼の証、という風に取れるわけですが、

出発前のリンドバーグはとにかく飛行機を軽くしなきゃ 軽くしなきゃ っつってかなり神経質になっていましたから、その様を客観的に見てた友人の判断としてペンダントを忍ばせることが正しいと感じたのだと思います。


なんていうか リンドバーグはずっと合理的な判断、論理的な思考で飛行準備をしてきて、それらの象徴とされるのが「軽さにこだわる」であり、「俺は神になんて祈らない、祈ったところで無駄だからだ」的なセリフをその友人に投げかけたりするわけですが、

友人から見るとその様子は 余裕のなさのようにも見え、このペンダントが意味する信仰が君の力になることがあるだろう ってな意味もあったと思います。果たしてリンドバーグは空の上で祈ったのかしら。

そして軽さにこだわる男リンドバーグはサンドイッチを食べた後、そのゴミを捨てようとしますが、眼下に広がるイギリスの美しい街並みを見てゴミをポケットにしまいます。


次で終わります。


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目