2020/09/18 09:17

本日のBGM アシュケナージ - 即興曲第四番


昨日の夜更から雨が降っていて、今朝も降ったり止んだりしてるんですけど雨が降るとできなくなる作業というのがありまして、例えば粘土を作る作業は屋外で粘土を掘ったり運んだりするので雨だとできませんし、

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釉薬をかける作業も雨だとあまり良くなくて、というのも素焼きした器に釉薬が吸着するのは素焼き状態の粘土に吸水性があるからなんですけど、雨で湿気100%だと素焼きの器も湿って、

その結果 器が釉薬を吸い込む量も少なくなるので、雨の日は通常よりも厚めに釉薬をかける必要があるため 急ぎでない限り雨の日には釉薬をかける作業はしません。色のある釉薬は かけた時のちょっとした厚みの差で焼き上がりが違います。


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あと今作ってるんですけど、こんな感じの平皿↑も雨の日には作れなくてですね、ていうのも粘土を伸ばすためのローラー、こちら↓は布で挟んで粘土を伸ばしているやつなんですけど、

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布が吸水した状態でローラーをかけると粘土がうまく剥がれなくて、伸ばした粘土がちぎれたりとか、水を含んだ布にシワが入って、そのシワが粘土についちゃったりするため このローラーマスィーンは布が乾かないと使えず、雨の日は布が全然乾かないせいで平皿作りは大変非効率になるため こちらも急ぎでない限りわざわざやりません。

でも急ぎでやるしかねえぜ!って時は片栗粉をパフパフして強行します。昔いた職人さんたちが小麦粉とか色々試したらしいですけど片栗粉が一番良いらしいです。石膏型から剥離させやすくするときにも片栗粉は使いますね。


となると雨の日というのは ろくろでの作業か手捻りでの作業がメインとなるわけですが、でも多くの方が陶芸家というと常にこの「ロクロか手捻りで何か作ってる」というイメージが強いようで、雨の日はそのイメージ通りになれますけど、普段はその他のことを色々やっているので これを前提とした質問、

例えば1日にどれくらい作るのですか とか、1日でもロクロを離れると感覚が変わりますか、などという質問の時に答えるのが難しくてですね、そもそも前提としている陶芸家像に乖離があって、ものすごくあやふやにしか相手に伝わらないことが多いですね。「いや〜そんなことないですよ〜」みたいな。


でもきっと彼らの欲してる答えは 「毎日ひたむきに土と向き合っています。1日でも作らないと取り戻すのに1週間はかかりますね。」 的な心地よい陶芸家幻想なわけで、でも幻想は悪いことではないから私も一丁幻想を補助するためにペロペロっと嘘ぶっこいて 

調子の良い時は1日に2万個くらい作ってるとか、土の声が四六時中聞こえて寝不足なんですとか、作る前からすでに形はあるのだとか、全てのものはいずれ土に還る、私が作っているのは土の前世の記憶をただ再現しているだけだ! とか そんなことを嘯いてみようかしら。

さすがに盛りすぎってことでみんないい感じに冷ややかに見てくれて、むしろ幻想の機能が今より落ち着くかもしれない。


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目