2020/10/12 13:59

本日のBGM 大滝詠一 - 君は天然色


こちら↓は あがの焼の代表的な釉薬「緑青流し(ろくしょうながし)」なんですけど、この二つは同じ土を使って、同じ緑青の釉薬で、同じ電気窯で焼いたものですが微妙に色が違います。

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日の当たるところで見ると上の写真↑の左のやつがこれ↓で、

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右のやつがこれです↓緑色の部分でいえば左の↑が青っぽくて、右の↓がややくすんだ色をしています。

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この二つの違いは何かというと緑青ではない部分の釉薬、つまり透明秞の違いでして、庚申窯では地薬とか言ったりしますけど、透明秞は何かと使う基本的な釉薬ですね。

透明秞の成分は 長石っていうガラスの素みたいな石と、植物の灰、通称 土灰(どばい)っていうのを6対4で混ぜて作りますが、この土灰は天然物と合成物がございまして、

合成物は釉薬の業者さんが作ってるやつで、必要な成分だけを人工的に精製した物で、天然物は植物を燃やした灰そのものでございます。


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この写真↑でいうと、上のくすんだ緑の方が天然土灰を使った透明秞で、下の青っぽい緑の方が合成土灰の透明秞です。まあなんか天然土灰のほうが天然っぽい感じしますよね。

天然土灰と合成土灰を比べると、合成の方が釉薬の発色が良くなるため、庚申窯の釉薬はほとんど合成土灰を使っています。

しかし私的には天然の方が好みなので、このおちょこたちもお任せってことで今回は天然の透明秞でおちょこを作ることにしました。


ちなみに このおちょこの渦模様は白化粧土ですけど、これも同じ塗り方をしてて、天然の方が白っぽいのは 天然の透明秞の方が融点が高いからです。つまり熔けが甘いから白化粧も熔けずにしっかり残ってるんですな。

もっと温度を上げて焼けば天然透明秞もきれいに熔けるのですが、そうすると緑青が熔けすぎて緑が薄くなるので、緑青の釉薬にも天然土灰を使った方が良くなります。土灰はいろんな釉薬に入っておるのです。

というわけで天然土灰を使った透明秞を作りまして、これがその天然土灰↓ 土灰上と書かれてるのは上等なやつってことです。下等なやつもあります。

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でも何が上等で何が下等なのかはよく知らなくて、て言うのも この土灰は祖父が管理してたやつで、祖父が自分で作った灰だと思うのですが その辺をちゃんと聞かずじまいだったんですよね。燃やした灰の中のきれいな部分だけってことでしょうか。

まあわからんことはわからんってことで、とりあえずなくなるまで使って、無くなったらまた自分で灰を作ってみたいと思います。多分庭の木を剪定した枝葉を燃やしたやつじゃないかと思うんですけども。灰によって透明秞も個性が大きく変わりますからねー。

透明秞は透明だけど大変に奥が深いです。素材勝負みたいなところもあるけど、いい透明秞はめっちゃかっこいいですから、いつかいろんな透明秞を作って いい組み合わせを発見したいですね。

とりあえず今回は 今できる透明秞作りってことで 次に続きます。


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目