2020/10/20 19:43

本日のBGM Joni Mitchell - River


前回からの続きですけど 今年の夏の豪雨で城島瓦の方は結構大変だったみたいで、ていうのも いぶし加工をしてもらっている渋田瓦工場は、九州最大の川で、なおかつ日本3大暴れ川の一つである筑後川の支流のすぐそばにあって、

これはたまたまうっかり渋田瓦工場がそこに建てたわけではなくて、瓦屋さんは昔から川のすぐそばにあったのだそうです。この地図内でも瓦屋さんが3件ありますが、どれも川沿いですね。

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それというのも瓦は一枚二枚で使うわけではありませんので、家一軒分の瓦でも大変な重さになるわけで、それが城で使われる瓦とかになると とんでもない量になりますから、鉄道や自動車が発明される前の時代では船しか運搬手段がなかったということらしいですね。

近代都市の発展には工業製品の運送のため 海か大きな川に面しているというのが不可欠な条件だったりしますが、そんなわけで城島の瓦は船で運ぶから 近場だけでなく長崎とか熊本とかにも出荷されていたみたいです。


それで今年の豪雨では工場前に積んだ土嚢のギリギリまで水が来てたそうで、それを乗り越えられると いぶし窯が一段低いところに作られてあるから窯に水が入り込んでしまって、そうなったら大変だ! っていうキワキワな状況だったみたいです。

結果として窯には浸水しなくて無事に済んだみたいですが、一応湿気抜きのために窯を空焚きしたそうです。いやー同じ窯業でも立地に差が出るもんですな。陶芸の窯元とかは大体山奥にありますよね。土が大事とかで。でも瓦では粘土も大量に必要になるから 粘土を運ぶにも船の方が良かったのか。


そんな城島瓦のいぶし加工で焼いたテストピースがこちらでして↓ 上の段が庚申窯で焼いた状態で、それをもう一度焼いたものが下の段になります。

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例えば この写真↓の 真ん中の水色が庚申窯でよく使うやつで、それをいぶし加工すると下の赤い色に変化した ということになります。

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ほんでその水色の釉薬を 庚申窯で還元をかけて焼いたらピンク色っぽくなるのですが、還元で焼いたものをいぶし加工すると 下の写真↓の左側の 赤ピンクっぽい色になります。

しかしあらかじめ還元で焼いたものを焼き直した場合、釉薬に気泡が出やすいみたいですね。色合いはいいと思うんですけど。

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他にもこの白いの↓は わら白ですが、ほんのりピンクに変化しています。でもこれは多分一緒に焼いた別のテストピースの釉薬から銅分が飛んで付着したやつでしょうね。銅ってば焼いてる最中に 飛びやすい成分なんだそうです。

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黄色↑もかなり暗い色に変化してますね。土が黒くなったせいなのかしら。あと伊羅保(いらぼ:釉薬の名前。結構いろんな産地で使われてる。茶色のやつ)↓はシルバーになってますね。鉄分を含んでると銀化する傾向にあります。銅由来の青い釉薬はどれも赤く変化しますね。

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こんな感じで色変化をチェックしたのがあと30種類くらいあるのですが、そちらの方はまたいずれ紹介させていただければと思います。


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目