2020/11/04 20:12

本日のBGM 立木リサ & 今野雄二 - 気分を出してもう一度 


画像1

あのシュリシュリという音が苦手なので 乳鉢を使うことなく人生を終えたかったのですが遂に使う機会が訪れまして、呉須による絵付けが避けて通れなくて、呉須ってのはゴスって読むんですけど、コバルトのことでして、コバルトブルーのコバルト、有田焼とか波佐見焼の青い色が呉須によるもので、陶磁器で大変よく使われる顔料ですね。

画像2

これもオーダーなんですけど 来年の干支の「丑」の字を入れたおちょこで、こんな感じに書いていきます↓ 全然「丑」とは違う形ですけど これも丑の字体の一つなのです。たぶん。丑よりもこっち↓の方が牛っぽいし 左右対称だし こっちがいいなーということで強行採用しました。記号的な感覚が良いんじゃないかと思いまして。

画像3

斜めからの写真ですけど、焼き上がりはこんな感じになります↓ これサンプルのやつだからゴスが濃くてにじんでるけど、今回は薄めて書いたから たぶんいい感じになっているはず。明日の朝には窯から出てきますね。

画像4

ちなみに釉薬は天然土灰の透明釉です。それを還元したやつで、土に鉄分が多いから草色っぽい色になっております。形はちょっと高めの撥高台で、一口で飲み干せるサイズですね。

画像5

このおちょこは おまかせオーダーのやつで、好きに作っていいということで 荒めの土と 天然の灰釉と しっかり焼き締め という組み合わせになりました。作るのは焼き物らしい渋みたっぷりなやつが好きですね。

あがの焼らしく緑青↓にしようかとも思ったんですけど、文字が入るから ちょっと要素多いなと思い 今回は透明秞だけにしました。

画像6

最初はゴスの使用、ひいては乳鉢の使用を避けるために赤土に酸化銅を混ぜた化粧土で文字を書こうとしてたのですが、どうも釉薬に溶けてしまうみたい↓なので諦めてゴスを使う事に。

画像7

酸化銅を含んでるだけあって文字の跡が緑色に変化しています。まあそれを狙っていたんですけど、普段使っている黒化粧土では、他の釉薬と合わさると熔けすぎるみたいですな。でもこれくらい熔けるなら これ全面に塗って焼いたら織部みたいな濃い緑の器になるんじゃないかしら。

織部もいろんな色のパターンがありますけど、いい具合に深い色が出た織部はすごく強いと思いますね。それを出されちゃあおいらの負けだ、みたいな。ああいう苔色みたいなのは日本人の琴線に触れるんでしょうか。

しかしもう新年もすぐそこって事ですけども、今年も残り2ヶ月を切っているとは早いですね〜。このおちょこもずいぶん前に注文を受けてたけど もう締め切りが迫ってきてるなんて。


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目