2020/12/06 20:01

本日のBGM 冨田ラボ - OCEAN feat. Naz


2日前くらいに七産地の研修会ってのがありまして、七産地ってのは福岡県内の、指定伝統工芸品七品目の産地のことでして、上野焼、小石原焼、博多織、博多人形、久留米絣、八女提灯、八女福島仏壇の7つで、これらの産地にはそれぞれ協同組合があり、その中に青年部というのがあって、

各産地の青年部同士の交流を兼ねて、どこか一つの産地に青年部の人たちが集まって、その産地の工芸品やら 作られている様子やらを視察するというのが七産地の研修会なんですけど、どこか一つの産地というのは持ち回りで、今回は上野焼のターンでして、我々はおもてなし側だったんですけれど、

今回は上野焼青年部部長である堀田窯の めぐみさんが全部 視察内容やら手続きやらをやってくれたおかげで私はもう何もする必要がなく、当日来て普通に参加して呆けておったんですけど、

当日の流れは、庚申窯の向かいの渡窯に工房を見せてもらって、それから福智町の図書館「ふくちのち」にある、3Dプリンターやらレーザーカッターやらある ものづくりラボにて体験って感じで、

渡さんの工房は何回も行ったことはあるものの やっぱりうちよりも絵になるな〜って感じで、土作りについての話も興味深いものがあって いずれそのことも紹介したいと思っておりますが、今回は図書館のものづくりラボが大変に優秀であるということをしっかりと認識いたしまして、

その内容はレーザーカッターで焼き物の箸置きに文字を入れて、箸置きの入れ物もレーザーカッターで切り出して、その箱を組み立てるというもので、こちらが↓箸置きと入れ物の箱、ふくちのち って文字が彫られております。

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入れ物の箱もレーザーカッターで切り出されたやつで、ここにあるマシーンでは4ミリの厚さまでなら木材とかを切断できるそうです。こんな麻の葉模様、職人さんが1日がかりで作るような精度ですが、レーザーカッターなら5分くらいでできてしまうんですな。

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ちなみにこの手は博多人形師の田中さんです。勝手に出しても許してくれると思いまして。

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こちらがレーザーカッターにセットしている様子。この箸置きを置くための枠もレーザーカッターで切り出してるんだからたまんねえぜ。

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こちらはレーザーカッターで試し彫りされまくった渡さんのうつわですね。なんか修行中の彫り師が仲間の練習台になって身体中タトゥーだらけに、みたいなことになっておりますが、表面だけ黒で、内部が白い器とかはこんな風にはっきり刻印されます。

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私が前に作ったコトコト列車のお皿も。右の方にチラッと見えているのはJALのマークを彫った鉄赤の湯呑みですね。手前の上野焼の文字もレーザーカッターで作られたものです。

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こちらは箱を切り出している様子。この凸と凹が全く同じサイズで切り出されるため、カチッとはめると接着剤いらずで箱が組み立てられるのです。恐るべしレーザーカッター!

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そのほかにも3Dプリンターや、

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画像通りに刺繍を入れることのできるミシンや、シールを画像通りにカットしてくれるマシーンなどがありました。

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図書館ができたのは二年前か三年前なので、その時すでにすごいって思っていたんですけど、今はその使い道や応用を思いつけるようになったと言いますか、

3Dプリンターが出たときに 日本では手作りへの信仰が強いから やや遅れるだろうけど、3Dプリンターの精度が上がってきたら いずれは手作りの産業は大きく衰退するだろうと思っていて、その状況で生き残るには作り手自身がパーソナリティーとして価値を持つか、アート的な方向しかないと思っていたのですが、

今回見て思ったのはこういったテクノロジーも自分たちの中に取り入れて、手作りの得意なところ、テクノロジーの得意なところを組み合わせることで、今までと同じクオリティのものが低いコストで作れるようになったり、今までは作れなかったものが作れるようになったりして、そうやって少しでも寿命を先延ばしにして、その猶予でまた次の手を考えるというのが、多分一番真摯な態度ではないかと思いました。

今回来られていた方の何人かは、自分のとこで作っているものに対して、これらをどう役立てるかを金額計算までしていたので、伝統工芸もまだまだ続いていくのではないでしょうか。


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目